怒車―どしゃ―

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 他にも、エネルギーが 「恋愛」の恋車(れんしゃ)、 「悲しみ」の悲車(ひしゃ)、 「恐れ」の恐車(きょうしゃ)、 「応援」のファイティン車など、思いつく限りの感情を試していく。  社長はエネルギーになり得る感情を、貪欲に探し求めたのだ。 「他にないか、他に」  ある日、社長が社内を見回すと、社員は全員、能面になっていた。 「なんてことだ。感情も、持続可能なエネルギーにはなり得んのか……?」  この時、社長は「焦り」をエネルギーにして走る車――焦車(しょうしゃ)の開発を思いつくのであった。  しかし、その半年後には、社長もすっかり能面の仲間入り。以前の覇気は、見る影もない。  見かねた社長の息子が言った。 「お父さん、どうして感情を種類ごとに分けたのさ? どんな感情も丸ごとエネルギーにしちゃえば良くない? あと、感情を一気にエネルギーにするんじゃなくて、溜めて使えば持続可能だと思うな」 「そうかもしれんな。しかし、開発はもう面倒だ。お前がやるか?」 「いやだよ、めんどい」  こうして会社は、ただただ部品を作る工場と化していった。  どこもかしこも、エネルギー不足は深刻な問題である。
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