キアゲハ

2/10
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
幼い頃の僕は昆虫が好きで自宅の裏手にある山の茂みに、よく昆虫採集に行くことが多かった。 僕の自宅は山梨県南巨摩郡身延町にあって、自宅裏手から少し山に登ると自然豊かな木々が茂り、きれいな澄んだ沢があって小動物や昆虫が数多く生息している。 僕は小学校の友達と接するのが苦手で、なかなか友達の輪の中に入っていくことができなくて、よく山で1人で遊ぶような子供だった。 7月後半小学校が夏休みに入ったある日の早朝、6年生の僕はいつものようにカブトムシとクワガタを採るために自宅裏手の山に登った。 山道の途中にきれいな薄紫色のハナトラノオの花が咲いていて、そこに美しい黄色の羽を持ったキアゲハがとまっていた。 僕がキアゲハに見とれていると、その近くに自分の身を潜めてじっとしている大きなカマキリがいることに気が付いた。 そのカマキリはキアゲハの方向をじっと見ていて、僕にはカマキリはキアゲハを捕食しようとチャンスをうかがっているように見えた。 思わず僕がそのカマキリを指でつまむと、キアゲハは僕とカマキリに気付いたようで、舞い上がってひらひらと羽ばたいて山の上の方向に舞って行ってしまった。 そのキアゲハの羽ばたく姿はとても美しくて、僕はそのキアゲハのことが目に焼き付いた。 僕はカマキリをそっと葉の上に戻して、カブトムシとクワガタを探すために山の奥に入って行った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!