1話 芋餅

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 ※※※  それからしばらくして、ーー  ようやくサーラは作業を終え、再び居間に戻ると食卓のテーブルに突っ伏して、一息ついていたのだった。洗濯や掃除にゴミ出しなど、多岐に渡っていたが全く滞りなかった。慣れたものである。  しかし気がつけば、さらに日は登り、朝食には少し時間が過ぎていた。  「あぁ、腹が減ったの。…」とぼやきつつ、彼女はキッチンに赴くと、鍋に残ったスープを自分の皿によそっていたが、  「…でも、あれだけじゃ腹持ちが少ないから、もう一工夫するか。」  と今度は全く違う調理に取り掛かっていく。まずはじゃがいもを切らずに、再び湯を張った鍋に入れていく。湯で上がったら皮を剥いてすり潰し、小麦粉と塩を混ぜながら練って平べったく形成すると表面に油を塗りたくり、今度は釜戸の火でこんがりと色がつくまで焼いていた。  そうして出来たのは、芋もちである。残りのパンとカブのスープを付けて、それなりの量になる。食前の祈りを済ませてから、口に運び、咀嚼していく。  芋もちは、外側がカリッとした歯ごたえがし、中身はしっとりでもちもちとする。また味変にスープに浸して食べてみても、カブの甘さが溶けた汁が纏わり付いて美味しさが増した。  「相変わらず、美味しいのぉ。」とサーラは呟きながら、不思議な感覚になる。芋もちは生まれて初めて作ったが、作り方から味までを完璧に覚えている。因みに先程嗜められた口調も同様だった。やや疑問に感じたが、深くは考えずにお腹を満たす事を優先していた。
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