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さらには巷では、流行り病も蔓延しており、大勢の国民の命を失う様な危機に瀕していた。
もちろん【マルフィア】も例外ではない。多くの人々は難を逃れる為に、故郷を捨てて他国に逃げてしまったようだった。
そしてラーサもまた、流行り病に掛かってしまい、屋敷の自室で床に伏せている。
「うぅ、……。」
「……ラーサ様。」
彼の眠るベッドの周りには、全ての使用人達が取り囲むように並び、暗い表情で俯きながら佇んでいる。また女性や子供の中には、鼻を啜ったり、涙を堪えて声を押し殺す者もいる。
部屋の中には、重く苦しい空気が漂っていた。
ふと、ラーサは弱々しくも笑顔を浮かべると、最後の力を振り絞りながら、
「皆、…泣くではない。…今は辛いかもしれんが、きっとまた楽しい日々が来る筈じゃ。…その時は、…また皆で食卓を囲んで、旨い料理でも食べよ、…う。……」
と、か細い声で話かけたのだった。
その後には、何が起こったのかは解らない。
だが朧気には、ーー強烈な眩い光が視界一杯に広がり、全身をふわふわとした感覚が包んでいたのは、確かだったと記憶している。
※※※
そうしてサーラは、なんとなく懐かしさを感じており、やがて強い眠気に誘われると、意識を手放してしまった。小さな寝息を立てており、安心した様な表情を浮かべていた。
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