第二章 愛する人が二人いる

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「おぉ、いい匂いだ。今夜もご馳走だな」 「お父さん、おかえりなさい!」 「ただいま、真也。良い子にしてたか?」 「うん。お父さんも、ちゃんとお仕事してきた?」  もちろんだ、と笑う玄馬に、幸樹も微笑みかけた。 「おかえりなさい、玄馬さん。先に、お風呂にしますか?」 「僕、お父さんと一緒にお風呂に入りたい!」  賑やかな真也に、玄馬は目尻を下げた。 「そうかそうか。じゃあ、一緒に入ろう」  二人でバスルームに向かう、父子。  その背中を見送り、幸樹は少しだけ不安になった。 「真也、いつ玄馬さんの刺青を意識するようになるだろう」  幸樹や真也を危険に巻き込まないよう、玄馬はこの数年きれいな仕事を選んでいる。  いずれは、暴力団の看板を下ろす覚悟まで、できている。 「でもまだ、ヤクザさんなんだよね」  施した刺青も、消えはしない。  小さくため息をつき、幸樹は天ぷらを皿に盛った。
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