第一章 人生最良の日

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「幸樹、君はまたそうやって動き回って!」  花束を渡すことも忘れ、玄馬は慌てて彼の体を支えた。 「大丈夫です、玄馬さん」 「毎度私を脅かすんだから、君は」  マスターも、何とか言ってくださいよ。  玄馬はカウンター向こうの遠山を、頼った。  だが、遠山は笑っている。 「病院の先生は、無理のない程度なら動いた方がいい、っておっしゃってるから」 「そんな病院は、転院させましょう!」 「九丈さんも、幸樹くんのことになると、まるで弱いねぇ」  幸樹の代わりにバラを受け取り、遠山はニヤニヤと笑う。 「玄馬さん、お花ありがとうございます」 「花なんて。君が喜んでくれるなら、花屋じゅうの花を買い占めてくるよ」  幸樹になだめられ、玄馬はようやく席に掛けた。
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