第二章 愛する人が二人いる

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「え? パパも水族館に行くの?」 「そうだ」 「お父さんと僕だけじゃなくって?」 「ああ」  少しだけ、真也は口を尖らせた。 「今日は、お父さんを独り占めできると思ってたのにな」 「パパも一緒でなければ、お父さんは水族館には行かない」  クッションを抱き、駄々っ子のような仕草の玄馬に、真也は仕方がないな、といった表情だ。 「いいよ。パパも一緒に行こう」 「真也、いいの?」  息子に気を遣う、幸樹の姿がそこにあった。 「やだ、って言ったら、お父さんはパパと二人だけで水族館にいくでしょう」 「……読まれてるな。私の行動は」  そうと決まれば、と玄馬はさっそく支度を始めた。 「行くぞ! 水族館!」 「解りやすいなぁ、お父さんは」 「そうだね」  やっぱり子どもが二人いるみたい、と幸樹は玄馬を笑い目で見た。
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