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「若(わか)、ビデオ撮影の準備は、整っています」
「ありがとう、松崎。頼りにしている」
二人でコーヒーを飲みながら、仕事とは無縁の会話をしている男たちだ。
松崎にとっては、これをしくじると一生恨まれるだろうから、何より大切な仕事なのだが。
「しかし、若が父親になるとは」
「松崎には、さんざん縁談を勧められたなぁ」
「いざ、人の親になられるとなると、感慨深いものです」
正直、玄馬と幸樹の結婚を嬉しく思わなかった松崎だ。
始めは。
だが、婚約、妊娠、結婚と、玄馬と幸樹を見守っていると、そんな感情はどこかへ行ってしまった。
(若は、心底幸樹さんを愛していらっしゃる)
心の、支えになっている。
組には何の旨味もない幸樹だが、玄馬にとっては活力のもととなっている。
組長が元気なのは、いいことだ。
「私は、良い父親になれるかな」
「先代の生きざまを見てこられた、若です。大丈夫です」
「ありがとう、松崎」
玄馬は、松崎をはじめ、部下にもよくこういって『ありがとう』と言うようになっていた。
幸樹の影響だが、それは皆に好意的に受け止められていた。
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