2.手縫いのシャツ

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 手縫いのシャツは完全なオーダーで、個々の身体に合わせて作るものだと聞いているし、職人によっては顧客の職業や、どんなシーンで着るものかまで確認した上で作成することもあるらしい。  あの華奢で、はかなげな彼女がそんなふうに作っている姿を想像すると、なんだかそれは壊したくないような、大事だと言った花小路の気持ちが貴堂にも分かった気がした。 「でも、無理はしなくていい。そんなに注文がある忙しい中に、さらに僕の注文を入れるのは申し訳ないし」 「いいえ。貴堂キャプテンなら、きっといいお客様だから彼女も喜ぶでしょう」  花小路はそう言って、にっこり笑った。  それは氷の王子ではなくて、花王子にふさわしい笑顔だった。 『3日後に帰宅するからその時に食事に行こう』  そのメールにスレッドで時間や場所が記載されている。  紬希はメールを受け取ってから何度も時間や日にちを確認した。 ──うん、今日よね。間違いない。  三嶋紬希(みしまつむぎ)のお隣の家のご子息である花小路雪真は、パイロットである。  とても優秀でその上綺麗で、誰もが憧れてしまうような人。子供の頃から、紬希の近くにいて優しくしてくれた人だ。  子供の頃から紬希は引っ込み思案で、大人しい性格だった。友達と遊ぶより、スケッチブックに向かって、何か描いている方が好き、というような子だったのだ。  そんな紬希にも雪真は優しかった。
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