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貴堂の言っていることは自分でも理解できる。それくらい貴堂の説明は分かりやすかった。
けれど、こんなにドキドキするとか、胸がきゅうっとするとかそんな風には思わなかったから。
それでも、紬希にはこの自分の想いがとても大切なものだということは分かる。
(貴堂さん……私も大事にします)
「紬希……? すごいなこのシャツ」
「はいっ?」
ミーティングスペースに背を向けていた紬希はそう声を掛けられて振り返った。
そこには白シャツ姿の貴堂が手首のボタンを閉めながら立っていたのだ。
──か……かっこいいっ!!
貴堂はスラリとしていて背が高く、肩幅もそれなりにあり、シンプルなシャツなだけにそのスタイルのよさが際立っていた。
「花小路くんがいいと言っていた訳が分かったよ。動きをほとんど制限されない。しかも見た目は非常にスタイリッシュだな。どうしたらこうなるんだ?」
「それは……肩の可動域を考えて……割と布を惜しまずにカッティングして……」
「紬希?」
「すごく、素敵です……」
ふっ……と目元を笑ませて、貴堂が紬希に歩み寄ると、紬希は後ろに後退してゆく。
「え?」
「いえっ!」
貴堂が一歩進むと、紬希は一歩後ろに。
にこりと笑った貴堂は足早に紬希に寄っていくと、紬希も、とととっと後ろに後退していった。
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