10081人が本棚に入れています
本棚に追加
真っ赤になって貴堂を見ているので嫌とか嫌いではないのは分かるのだけれど。
「ふーん……」
とん、と背中に紬希は壁の存在を感じる。
もうこれ以上後退することはできない。
あと一歩、貴堂が足を出したらその距離はほとんどなくなる、というくらいの近さだ。
「さっきの交際を了解してもらう返事をしていなかったら、誤解をしてしまうところだけれどもね。距離を置きたくなった理由を聞いてもいい?」
「違います!素敵すぎて……口から心臓が出そうなんです」
「口から……」
あはは……と貴堂はすごく笑っている。
「あの、改めて拝見したら貴堂さんは本当に素敵な方なのだと再認識してしまって。それに、自分のシャツを目の前で着て頂いてとても緊張するし、とてもお似合いだし、褒めて下さるし」
「ストップ」
そう言って貴堂は紬希の口元を手で軽く抑える。今度は貴堂の顔が少しだけ赤くて、触れられたことよりもそちらに紬希は驚いてしまった。
「こっちが照れる。紬希、このシャツはすごい。僕は今までこんなに身体にフィットしながらスタイリッシュで使う人のことを考えたシャツを着たことはない。僕も感動しているし、それを作ったのが僕の恋人なんてとても誇りに思う」
紬希は思わず両手で自分の顔を抑えた。
貴堂にそんな風に言われたらどうしたらいいのか分からない。
最初のコメントを投稿しよう!