10081人が本棚に入れています
本棚に追加
「もうっ……分かりました、から」
気づいたら二人の間の距離はなくなっていた。
貴堂が紬希の手をそっと外す。
「誇りに思う。とても尊敬する。そして、とても好きだよ。会いたくて仕方なくて会いに来てしまうほどに」
「私は、こんなんなのにいつも優しく接してくださるし、貴堂さんはとても素敵で思いやりがあって、貴堂さんだからこんなに近くても平気なんです」
「紬希……」
紬希の自己否定は根深い。
けれど根底はとても素直な性格だ。
そんな紬希の信頼を得られていることを貴堂はとても嬉しく思うしそれに応えたい。
握ったままだった手をそっと自分の方に引き寄せて、貴堂は紬希を抱きしめた。
「紬希、明日の仕事が終わったとしたら、明日のその時間を僕にくれないかな」
「あの……」
腕の中で紬希は顔を上げた。
「ん?」
なんだか決意をしているような一生懸命なその顔を見て、貴堂は可愛らしい頬をつつきたくなってしまう。
「私、思ったんです。私も貴堂さんを大事にしたいんです。お仕事は貴堂さんが飛行機に乗っていらっしゃるときに私は出来ます。だから、こうして一緒にいられるときに一緒の時間を過ごすことができたら……私も嬉しいです」
「うん?」
「明日はお休みにします」
そう言って、腕の中の紬希は貴堂に向かって照れたように笑ったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!