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「そんなこと、あるんだ……」
「初めてです。お兄ちゃんがきっとびっくりするわね」
「デートしようか、紬希」
「私……」
「大丈夫。僕が守るから。君に怖い思いはさせない」
「いえ、貴堂さんと一緒ならきっと怖くないです」
──この決心を守りたい。自分のために決心してくれた紬希を守りたい。
強く抱きしめたいけれど、紬希が怖がらないように貴堂はそうっともう一度紬希を抱きしめた。
「しかし、こういう動きでも一切邪魔にならない君のシャツは本当にすごいな」
「き……貴堂さんってば……」
紬希は貴堂に腕を動かしてもらったり、動作を確認してもらう。
「大丈夫ですか? この辺は? 変に突っ張る感じとかありませんか?」
先ほどまで近寄るのにも警戒していたくせに、こういう時は貴堂の二の腕に触れることすら紬希には抵抗がないようだ。
──仕事に夢中になるところは相変わらず……。
「全くない。非常に快適だね」
「良かった。ではこれで作りますね」
貴堂が脱ぐためにシャツのボタンに手を掛けると紬希は慌てて背中を向ける。
「これで、作るって?」
「今着て頂いているのは仮縫いです。シャツは仮縫いは実際の生地とは別の生地で作るものなのです」
背中の方向に向かって紬希は話しかけた。気にしないで貴堂は話しかけてくる。
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