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「水流からあそこに渦が出来そうだと予想して。空と同じだなあと思って見ていたんだよ。実際に空を飛ぶ時も同じなんだ。揺れを防ぐためには風の渦とか向きや強さをあらかじめ予想して、こまめに確認することがとても重要なんだ」
そこまで説明して、貴堂はハッとする。
──これがいけないのに。
けれど、紬希は楽しそうに水槽を見ていた。
「だからペンギンは鳥なのかしら。だって海を泳いでいる時はまるで飛んでいるみたいよね。陸を歩いている姿は鳥と言われてもよく分からないけれど、水中のあの姿を見たら鳥と言われても納得するもの」
紬希はそう言って貴堂に向かってにこりと笑って首を傾げた。
その時貴堂は紬希に、間違いなく込み上げるような愛情を感じたのだ。
この子が好きだと強く思う。
こんなところに来てまで飛行機なの?と思ったり、言ったりしない紬希が心から愛おしい。
それから二人は近海の魚を見たり、クラゲなどの水槽を通って、開けた場所に出た。
そこではちょうどイルカのショーをやっていたのだ。
「わあ! 可愛い!」
「では見て行こうか?」
「はい!」
紬希と手を繋いだ貴堂は通路の階段を上がっていく。
「前の方では見ないんですか?」
「後ろの方がいいと思うよ」
くすくすと貴堂は笑っていた。そうして席を見つけて二人で席に座る。
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