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「あの、貴堂さんは素敵ですけど、もっとってことですか?」
「そう! もっと、もっとだよ」
そう言って、貴堂は紬希にとても爽やかな笑顔を向けたのだった。
──どうしよう。これ以上カッコいいところを見せられたら困ってしまうかも。
けれど、そんな風に貴堂が笑顔を見せてくれることに、紬希は間違いなく心が温かくなって幸せな気持ちになったのだった。
ひとしきり水族館の中を見て回った二人は、外に出る。
「紬希、あれに乗ってみない?」
そう言って貴堂が指差したのは、大きな観覧車だった。
ドアが閉まり、ゴンドラがゆっくりと上昇してゆく。
最初は揺れも気になっていたけれど、紬希は窓の外の景色に次第に夢中になっていった。
そうして、目の前の貴堂がじいっと紬希を見ていることに気づく。
「貴堂さん。今日はありがとうございます」
そう言って、紬希は頭を下げた。
「楽しかった?」
「はい。とても」
けれどそれ以上に紬希が嬉しかったのはたくさん貴堂のことを知れたことだった。
水族館の水槽を見ながらたくさんの話が出来たことも嬉しかったし、また、たくさん貴堂の優しさを知れたことも嬉しかった。
貴堂のおかげで怖いなんて思うことはなかったのだ。
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