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「ごめん。主語がなかった僕のせいだな。今日のお出かけが大丈夫だったか確認したかったんだけれど、紬希、今の感想はキスの感想?」
──は、恥ずかしいっ!
「びっくりして、ドキドキしたけれど怖くはなかった? せっかくだからもう一つ聞いていい?」
紬希にしてみたらそんな感想を伝えるはずではなくて、聞かれたから答えたのにそれが盛大な勘違いだったと分かって、顔から火が出そうなのに目の前の貴堂は妙に楽しそうなのだ。
「なんですか?」
(すごく、すごく優しい人のはずなのに貴堂さんがいじわるしてる気がする)
恥ずかしくて泣きそうなのに、あまりにも貴堂が幸せそうに笑うから、泣くのは違う気がする紬希だ。
「怖くなかったのなら、もう一度してもいいかな?」
その返事を聞かずに、貴堂は紬希のそれに軽く自分の唇を重ねた。
驚いた紬希はやっとのことで声を出す。
「もう……顔から火が出そう……」
「大丈夫。出てないよ」
ポンポン、とあやすように頭を撫でられて紬希は顔を俯かせた。
好きな人が幸せなのは自分も幸せなのではないだろうか?
だから、こういうのもいいのかな……?
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