12.最終判断と紙飛行機

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「そろそろ部屋に入って。風邪をひくといけないから」 「はい」 「椅子をもう一つ買わなくてはいけないな」 ベランダにあるデッキチェアは一脚だけだから。  それは景色を気に入った紬希のため、と聞こえて紬希は嬉しくなってしまった。  その時、ピンポンと部屋のインターフォンがなった。 「食事だ。紬希、部屋の中を探検していていいよ」 ──探検?  車の中での通話もそうなのだけれど、貴堂は紬希にオープンにすることにためらいは一切ないようだ。  その気持ちは嬉しいけれど、かと言って紬希はあちこちじろじろと見て回れるような性格でもない。  一旦リビングのソファに座らせてもらおうと思ったら、壁際に小さな飛行機の模型がたくさん置いてあるのが見えた。  立ち上がって、紬希は模型が綺麗に並んでいる棚に向かう。  その模型の横に小さい白い紙で作られた紙飛行機が置いてあったのだ。 (紙飛行機?)  手の平くらいの大きさのそれは紙も少し古いもののように見えた。  紬希はそっとそれを持ち上げる。 「それはね、機長になって少ししたころかな。乗務していた乗客のお子さんがくれたんだ」  気付いたらケータリングの人がキッチンにいて、調理をしていた。  紬希に向かってそっと笑顔で頭を下げるその人は整った顔立ちでシェフコートを着た男性だった。
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