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兄は在宅で仕事をしながら、紬希のためにネットショップを開いてくれているのである。
『三嶋シャツ』の代表取締役でもあった。
こんな風に兄が守ってくれるから、だから内気な紬希でも仕事を請けていくことができるのだ。
「ん? 紬希、どうした?」
「今日は雪ちゃんとお食事に行ってきます」
紬希の今日の装いは、淡いブルーのブラウスだ。袖の部分がシフォン素材になっている。それに白いフレアスカート。
こちらにもシフォン素材を重ねているので、ふわりとした印象だ。
その姿は優しげな紬希にとても似合った。
「可愛い、紬希。天使みたいだな」
そう言って兄の透は紬希に微笑んだ。
もちろん、紬希が自分で作った服である。
「似合うかな?」
「すごく可愛いよ。雪真も喜ぶだろう」
紬希は俯いて、ふわりと笑う。
「……だといいけれど」
その時ピンポーンと玄関の呼び鈴が鳴った。
「雪真だろう。行っておいで」
「はい。行ってきます」
兄の透に笑顔を残して、紬希は店舗横の玄関に向かう。
そこには、すらりとしたスタイルの雪真が立っていた。
カジュアルなジャケットとパンツ姿なのは一度家に戻って着替えてきたからなのだろう。
「早くなかった?」
「うん。大丈夫。雪ちゃんこそ疲れていない?」
「平気だよ。明日はお休みだから」
気遣う紬希に雪真はそう言ってにっこり笑って、紬希のために自分の車の助手席を開けた。
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