13.先にあるもの

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「いや、むしろ君のことを心から尊敬していてあれから家に帰ってきてからも大変だった。素晴らしいランディングだったと大騒ぎだ。さすが貴堂くんだなと思ったよ。そちらのお嬢さんは……」  立花が紬希に目を向ける。  紬希は綺麗な仕草でゆっくりと頭を下げた。 「三嶋と申します」 「今僕がお付き合いしている方です。三嶋紬希(みしまつむぎ)さんです。紬希、こちらの方は僕の上司で立花さん」  お世話になりますと言うのもおこがましい気がして、紬希は頭を下げるに留めておいた。 「貴堂さん! 私来年からこちらの会社でお世話になることが決まったんです!」  紫は満面の笑顔で貴堂に報告する。 「へえ……それはすごいね。おめでとう。素晴らしいですね」 「いろいろ教えてくださいね!」 「いや、僕より部長や立花くんに教えてもらった方がいいですよ」  貴堂は控えめな笑顔を浮かべる。 「いやです。お父さんもお兄ちゃんも私には厳しいんだもの」  それには紫は膨れて見せた。そんな表情すら魅力的な女性だ。 「それはお前がわがままだからだろう。すまないね、貴堂くんオフなのに。彼女とゆっくりな」 「貴堂さん、教えて下さいね。約束ですよ」  そう言って、彼女は貴堂の腕に触れた。  貴堂はそっとその手を離す。 「機会があればね。では立花部長、失礼いたします」  貴堂が宝物のように紬希に触れ、二人で立ち去るのを立花紫はじっと見ていた。
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