13.先にあるもの

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「紬希?」 「雪ちゃん……」  紬希は雪真に2、3歩歩み寄る。  それだけで何かを察したのか、雪真は駆け寄ってきた。 「何か、あったんですか?」  雪真は貴堂に尋ねる。 「僕が……判断を誤って……」 「いえ。貴堂さんは悪くありません」  半分泣きそうになりながらも紬希は一生懸命伝える。その手が雪真の腕をしっかり掴んでいて、先ほど貴堂が触れたときは逃げていた身体が雪真には逃げていないのを見て貴堂は胸が詰まりそうになった。  本当は今すぐ奪い返したい。  大丈夫だよと言って、泣き虫の紬希を甘やかしてあやすのは自分でありたいのに。  関係性を作っている最中だった。少しずつ紬希の信頼を得られていた。  今まで築いてきたものがすべてなくなってしまったとは思わないけれど、紬希が頑張ってくれていて、それに甘えて油断したことも間違いではない。  紬希が強くなればいいとは思わない。彼女は彼女なりのしたたかさや強さをきちんと持っている。  その繊細さや、優しさも含めて惹かれたのだから。 「花小路くん、申し訳ないけれど、もし時間が許すなら紬希を送ってもらってもいいか? 紬希、本当にごめんな。また連絡する」  紬希は何か言いたげにして貴堂を見ていたけれど、その口から何かを発せられることはなくて、それを振り切るようにして貴堂は車に乗り込み、エンジンをかけた。
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