13.先にあるもの

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「どうしよう、雪ちゃん。きっと貴堂さんを困らせたわ。貴堂さんは悪くないのに、謝らせてしまった」  雪真が紬希を車に乗せて自宅に向かう中、震える声で紬希はそんな風に言う。 「悪くない? どこが? 僕や透がどれだけ紬希を大切にしてきたと思ってる?」  普段は物静かな雪真が少しだけイライラとした口調なのを隠しもしなくて、紬希は慌てて言った。 「雪ちゃん、貴堂さんはとても大事にしてくれていたのよ」 「じゃあ、なぜ今紬希はそんなに泣きそうな顔をしているんだ?」 「お願い雪ちゃん、責めないで……」  雪真は車を路肩に停めた。 「責めてないよ、紬希」  いつも変わってあげられたらどれほどいいのに、と雪真は思うのだ。傷つかないでほしい。  紬希にはいつも笑って幸せでいてほしいのに。  空港で紬希が見た女性はとても華やかで、貴堂にとてもお似合いだった。  貴堂には笑顔を向けていたけれど、時折『貴堂さんになぜあなたなの?』と言いたげな視線を紬希に向けていた。 「なにがあったの?」  車の中に穏やかな雪真の声が響いた。  デッキで待ち合わせをして、駐車場に向かう途中で立花親子に会ったのだと紬希は説明する。 「で?」 と綺麗で整った顔で雪真は首を傾げる。 「それだけじゃないでしょう?」  紬希は言いよどんだ。
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