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「それだけのことで、貴堂さんが判断を誤ったとまで言うとは、僕には思えないんだよね。立花部長のお子さんて航さん?」
「航さんがどんな方か分からないけれど、女性だったわ。兄が、と言っていたから妹さんなんだと思う」
「それは僕も知らないな。立花部長は航大卒で、貴堂さんも航大出なんだ。僕の印象では航大卒って縦も横の繋がりも結構強いってイメージ。立花部長も貴堂さんのことは特別可愛がってた感じがする。だからプライベートでの付き合いがあっても驚かないけれど、その妹さん? 貴堂さんのこと好きなんだろう」
「とても綺麗な人だったの」
「だから?」
「だからって……」
「紬希、君自分もとても綺麗なのだと分かってる?」
「そんなこと……っ」
紬希は首を横に振る。
「あるんだよ。だからジロジロ見られたり、要らない妬みや僻みを買ったりする。その妹とかいうのもそのクチだろう。けど、貴堂さんはそんな外見だけにとらわれる人ではないと僕は思っているんだけど」
確かに雪真の言う通りなのだ。
それは分かっているのだけど。
とても綺麗な女性が微笑んで、甘えて、貴堂に触れていた。それを思い出すと今でも涙が零れそうだ。
胸が潰れそうに痛くて、悲しくなる。
自分はあんな風に堂々と振る舞うことは出来ないと、紬希は思うからなおさらだ。
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