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こういうことになるから、こうやって紬希が傷つくから、だから雪真も透も紬希を外に出したくなかったのだ。
けれど、雪真も透も紬希には幸せになってほしい。だから雪真は口を開いた。
いつかは紬希に言おうと思っていたことだ。
「紬希、一つアドバイスをしてあげる。今は気持ちが落ち着かないかもしれないから貴堂さんと話をすることは難しいかもしれない。けど、必ず話はした方がいい。上手くなくても。それもきちんと汲み取ってくれる人だよ。紬希が選んで心を開いた人は信頼できる人だ」
大きな一歩を踏み出す先には幸せだけがあるとは限らない。
そこには困難もたくさんあるのだ。
けれどその困難の先に、今までなかった大きな幸せが待っていると、雪真は信じている。
それは雪真自身の経験からの言葉でもあった。
紬希にもそれをつかみ取ってほしい。
そのためにエールを送ること。
それが今自分にできるベストなのだから。
──私が選んで心を開いた人……。
「きちんと、考えます」
先ほどよりはっきりした紬希の声に、うん、と言って雪真は車のギアをドライブに入れ車を発進させた。
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