14.ゴーアラウンド

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14.ゴーアラウンド

 雪真は助手席に置かれた紙袋を見て、微妙な気持ちになる。  それは先ほど紬希に貴堂に渡すようお願いされたシャツの入っている袋だからだ。  紙袋には仕立て上がったシャツが入っている。  仕上がりを貴堂はどれほど待っていただろうかと思うと、それを自分が渡すのは忍びない。  貴堂にしてみれば、紬希から受け取りたいもののはずだから。  そう思って、一度は断ったのだ。  紬希は仕上がったのだから渡したい。でも今、貴堂と会うことはできない。  雪真が無理なら配送する、と言うので受け取ってきた。  どちらにしても雪真は貴堂に連絡は入れるつもりだったのだ。  確かこの辺……と聞いていた貴堂の自宅近くに車を停めて、雪真は貴堂に電話を掛ける。 『はい。花小路くんか』  貴堂はコール1回目か2回目くらいですぐに電話に出た。  いつもはハキハキと明るい声が聞いたことがないほど沈んでいた。 「なんて声してるんです。今、紬希を送ってきました。預かっているものがあるのでお渡ししたいんですが。今からでもよければお伺いしますし、出社してからでもいいなら会社に持っていきます」 『君の明日のスケジュールは?』  こういうことを先に確認するのが貴堂らしい。 「僕は明日は待機で明後日はオフです。以前にお伺いした貴堂さんのご自宅の近くに今いると思うんですが」
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