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「いらっしゃいませ」
お店に入ると、黒い服を着た人にスムーズに予約席に案内された。
前菜の『エビのコンソメジュレ・キャビア添え』は白い大きな皿に、エビやキラキラしたジュレと、綺麗な花が散らしてあって見た目にも華やかで綺麗なお料理である。
紬希の目はきらきらとしていた。
「すごい! 雪ちゃんとても綺麗だわ!」
「お花も食べれるからね」
「食用のお花なのね」
素直に喜ぶ紬希を見るのが雪真は好きだった。
花小路家が三嶋家の隣に引っ越しをしたのは雪真が小学校低学年の頃だったと思う。
雪真の父は商社で管理職をしていて、ちょうど海外勤務から帰ってきた時に、今の自宅を購入しているはずだ。
だから雪真は幼少期を海外で過ごした帰国子女だった。
小学校でも最初の頃は学校に、なかなかなじめずにいたところ、隣の兄妹は自分ととても仲良くしてくれた。兄の透とは同級生だ。
透と一緒に遊んでいると、いつも紬希がひょこっと顔を出すのが可愛かった。
雪真は一人っ子だったので、可愛らしいお人形さんのような妹は尚更羨ましかったのだ。
三嶋家は兄妹が子供の頃に父親を亡くしていた。その後母親が兄妹を育てていたけれど、その母親も数年前に他界していて、ここ数年兄妹2人で暮らしてきた。
兄の透は大学の頃からパソコンが得意でその頃からウェブ関連の仕事を請け負っていたのだ。
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