14.ゴーアラウンド

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 きょろきょろと辺りを見回して目印になりそうな建物を伝えると本当に貴堂の自宅はそこから目と鼻の先だったらしい。  マンションまでの道を教えてもらい、雪真はゲスト用のパーキングに車を停めた。  入り口にはコンシェルジュがいて、貴堂につないでもらい案内された部屋に向かう。  大手エアラインの機長ともなればこんな部屋に住めるのだな、と雪真は納得する。  部屋のインターフォンを鳴らすとどうぞと言われたので中に入った。 「花小路くん、奥だ。入って」  そんな声が部屋の奥から聞こえて、雪真は部屋の中の方に入っていくと、貴堂がベランダのデッキチェアで隣に何やら美味しそうなオードブルをテーブルに置いて、すでにワインを飲んでいた。 「お疲れ様。悪いな先にやってる。冷蔵庫は勝手に漁って構わないぞ。オレンジジュースとかジンジャーエールとかあったと思う」  そう言って、貴堂はキッチンの方を指差した。  オープンな性格だと思っていたけれど、貴堂はプライベートでキッチンに入られるのも抵抗はないらしい。雪真なら極力避けてほしいところではある。  雪真は遠慮なく冷蔵庫を開けさせてもらった。珍しい海外のジンジャーエールがあったので、それを手に雪真はベランダに向かう。  ベランダにキャンプ用の椅子が置いてあった。雪真用らしい。 「どうぞ」 「頂きます」
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