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雪真はベランダのキャンピングチェアに座り、プシュッ!と音をさせジンジャーエールを開ける。
少し辛みのある本格的な味だった。
「良かったらつまんでくれ」
「はい」
デッキチェアの横のテーブルの上にはおしゃれで可愛らしいオードブルが置いてある。
そして雪真は気づいたのだ。
──これは、本当は紬希と食べようと思っていたのではないだろうか?
忙しい中、紬希のために食事まで準備していたのだとするととんでもなく紬希は大事にされている。
「これって、紬希のためですか?」
「ああ、うん。一緒に食事をしようと言っていたんだけど」
はあ……とため息をついて、貴堂はワインをこくこくっと飲んで、少なくなったそれに手酌で注いでいる。
「分かりやすい落ち込み方ですね」
「落ち込むよー。一目惚れだぞ。すごーく大事にしていたんだ。最近一緒に出掛けたりしてくれていたから、油断した」
「一緒に? 出かけたんですか?」
雪真は透からは採寸の日に貴堂とランチに行った話は聞いていて、交際を申し込まれたところまでは把握していた。
きっと了承すると思う、と透から聞いたけれど、それ以降のことは確認していない。
「うん。水族館。魚を飛行機に例えるというつまらない会話にも目をキラキラさせて、だからペンギンは鳥なんですねとか言って、むちゃくちゃ可愛かった」
「紬希らしいな」
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