14.ゴーアラウンド

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 このまま降りてもいいことはないと感じたら、仕切り直しをしたほうがいい。  気流が悪い中で降りれば、ハードランディングになってしまうかもしれない。  しかし、ゴーアラウンドすれば、気流の悪さを一度経験しているので、次に降りるときにはそれに対応することができるのだ。  それは失敗して反省して、今の貴堂だから思うことだ。  降りないほうがいいと思ったときには、心の準備を整える意味でも、仕切り直しをする。  そうした決断も必要なのだとあの紙飛行機はいつでも教えてくれるのだから。 「ゴーアラウンド……か」  そう呟いた雪真に、貴堂がコールする。 「Go around」    笑った雪真がすぐに応じた。 「Roger follow missed approach course .JS air Say Reason 」(了解。同じコースで再度アプローチをしてください。JSA、ゴーアラウンドの理由を教えてください) 「To catch her heart」(彼女の心を掴むため)  貴堂のその回答に雪真は苦笑する。 「キザ過ぎませんか?」 「そうか? まだ、関係は始まったばかりなのに、こんなことで諦めたくはない。本当に本気で好きなんだ」  貴堂は知っている。  つらいとばかり言っていても前には進んでいかない。  判断して、実行することこそが重要なんだと。
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