10083人が本棚に入れています
本棚に追加
荒天の時は荒れている場所を避けたり、待つことも大事なのだ。それは逃げではなくて、それも一つの判断なのだということ。
大事なのはなにを優先すべきか見極めてなにをなすべきか決めることなのだ。
『話をした方がいい』
雪真にそう言われて、紬希は貴堂と話をしようと思っていたのだ。
けれど、あんなに話せるようになっていたのに、いざ電話しようと思うとどうやって切り出せばいいのか分からない。
紬希は作業場のあの貴堂と一緒にお茶をしたミーティングスペースで、携帯をつついた。
そうして、いつもは貴堂が連絡をくれていたのだと思い立つ。
そうやって、紬希との絆を繋いでくれていた。
なにを話せばいいのか分からないと思っているうちに時間は経ってしまう。
そして、いつも連絡をくれていた貴堂からも連絡は来ない。
もしかしたら、仕事が忙しいのかもしれない。
けれど、貴堂がなにかしてくれなければ、自分ではなにもできないというのは、違うのではないだろうか。
いつものように紬希は自分の心に聞いてみる。
私は何がしたいの?
──声が聞きたい。
『紬希に会いたい』
と言ってくれる貴堂のあの声がとても好きなのだ。低くて、優しくて少し甘くて。
真面目な顔で交際の説明をしてくれた。
太陽みたいな笑顔。
あははっと笑う顔も、声も開けっ広げでとても好きだ。
最初のコメントを投稿しよう!