2.手縫いのシャツ

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 大学を卒業してからは、就職はしないで、フリーでウェブデザインを請け負っているのである。  幸いなことにそちらは順調であり、紬希の手作りのシャツも事業としては順調に軌道に乗っている。  それでも(おご)ることも、派手にお金を使うこともしない兄妹なのだ。  紬希の極端な人見知りは大人になるほどひどくなっていくような気が雪真はしていた。  子供の頃は雪真が透のところに遊びにきていても、ひょこっと覗いてくるような子だったのだ。  人見知りのひどさは、紬希が綺麗になってゆくことと比例しているような気がする。  もともと人見知りだった紬希が学校での出来事でさらに人が不得手になり、成長するにつれて透明感のある清楚な美しさを発揮し始めた紬希は人目にさらされることで、さらに人見知りになる。  その美しさを女性らしく享受すればいいのにとも雪真は思うが、同様に自分の容姿で不必要に嫌な思いをすることもある雪真には紬希の気持ちも分からなくはないのだ。  雪真にとって紬希は大切な妹のような存在でもあり、自分の気持ちを理解してくれる同士の様な存在でもある。  だからこそ、妹のようにも思えるし、とても大事な存在なのだ。  そして紬希はとても華奢でありながらも、食事に行くといつもきちんと食べる。  紬希がものを残しているところは見たことがない。
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