15.待機終了10分前に電話は鳴るものである

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「雪ちゃん、私貴堂さんを信じると決めたの。ありがとう。後から知るのでなくて良かった」 「今起きていることを説明する?」 「お願い」 「貴堂さんの機体は今から30分ほど前に出発した羽丘発パース行きだ。予定していたパイロットが乗務できなかった関係でスタンバイだった貴堂さんが呼ばれて乗務した」  紬希はこくりと頷く。スタンバイというのがあって様々な理由で乗務できなくなったパイロットの代わりに乗務することがあるのだとは貴堂から聞いていた。 「火災が起きたのは離陸して15分ほどだ。管制とのやり取りによると、右エンジン部から大きな音がして、炎が上がったのが見えたらしい。炎は今鎮火している」  それを聞いて紬希はホッとした。 「火が消えたら大丈夫?」 「おそらく再度火が付く可能性は非常に低いと思う。機体は羽丘に引き返しているが着陸は今できない」 「どうして?」 「パースまでの燃料を積んだままで、着陸するには危険なんだ。火災があった以上、燃料投棄は出来ない。だから、上空で旋回しながら燃料を消費して着陸できる重量になるまで待機しているんだ。その間に他の不要な機体を滑走路からどかしたり、消防と連携したり、着陸するための態勢を整えている」  雪真は落ち着いて淡々と紬希に説明してゆく。
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