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制服のジャケットはロッカーなので、家からは自分のジャケットを羽織り、フライトバッグを引いてエレベーターを降りる。
「どうぞ」
黒塗りの車が待っていて、ドアを開けてくれる感じがいつまで経っても慣れない。
けれど彼らも仕事なのだし、貴堂も仕事なのだ。
「ありがとうございます」
そう言って貴堂は車に乗り込んだ。
「混んでいませんか?」
車に乗ると貴堂はそう運転手に声を掛ける。
「そうですね、行きは逆側は混んでいなかったと思います」
「分かりました。よろしくお願いいたします」
「かしこまりました」
その間に貴堂はタブレット端末で、気象情報や運行情報、滑走路の状況や積荷の確認を進めていく。
会社に到着したら、フライトブリーフィングがあるが、その前に把握しておかなければいけないこともあるからだ。
パースまで約10時間のフライトになる。
会社に入り、ロッカーでジャケットを羽織って身だしなみを整え、出社の手続きをしてアルコールチェックを受ける。問題なかったため貴堂はブリーフィングルームに向かった。
その入口には立花航が立っていた。
「よろしくお願いいたします」
「あ、立花くんが一緒?」
「はい」
「よろしくお願いします」
「お願いいたします」
以前はディスパッチャーという運行管理者も一緒にブリーフィングしたのだが、今は一緒には打ち合わせしないケースもある。
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