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天候も晴れで視界はいい。そのまま離陸は立花に任せることにした貴堂は管制との通信を請け負った。
『JS air 371 Wind calm RWY05 Cleared for Takeoff 』
「Cleared for Takeoff RWY05 JS air 371」
管制から離陸の許可が降り、機体は大きなエンジン音をあげて滑走路を加速し、ふわりと離陸する。
管制とのやり取りをしながら、貴堂も確認していたが立花の操縦には不安を感じるところは全くなかった。
優秀だな、と嬉しくなる。
『JS air 371 contact departure good-day』
「Contact departure good-day」
ここで管制はタワーからディパーチャーに切り替わり機体が緩やかに上昇してゆく中、立花はオートパイロットに切り替える。
コックピットの空気が少し緩む瞬間だ。
「あの……貴堂さん、少しだけいいですか?」
管制のくれる情報に耳を傾けながら、
「んー?」
と貴堂は返事をした。
「先日は妹がすみませんでした」
「どうして君が謝るんだ?」
先日のことだが、貴堂は立花に対して何かわだかまりは持っていなかった。
だから、急にそんな話が出て少し戸惑う。
「妹のことだから、きっと強引なことを言ったんだろうと。父が貴堂さんの彼女のことを褒めていたのも気に入らなかったようです」
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