15.待機終了10分前に電話は鳴るものである

9/12
前へ
/212ページ
次へ
 貴堂は気にしていなかったけれど、立花の方はとても気にしていたようだ。 「積極的なのはいいけれど、協調性は求められる仕事だよ」  同じ会社に入社するのならば、そこだけは伝えたいところだった。 「仰る通りです」  貴堂は思ったままを口にする。正直に伝えた方がいいと思ったからだ。 「なにも言うことはないよ。何か気持ちを傾けてくれているのならありがたいけれど、僕にはとても大事な人がいるから、応えることは出来ないかな。彼女には僕から恋愛関係のパートナーになって欲しいとお願いしたんだ。その約束は破れないし、破るつもりはない」  立花の口元がふっ……と緩む。 「恋愛にも真面目なんですね、貴堂さん。そういう所もカッコいいなって思いますよ。業務の話をされているのかと思いました」 「本当に恋バナ? そういうの下手なんだ僕は」  貴堂が途方にくれたように言うのに立花は笑ってしまう。少し軽い口調で貴堂に言った。 「だから、あまたの女性を振り続けても悪くは言われないんですね」 「おい、振ったとか言うなよ。振られたのは僕の方だからな」  その瞬間だ。 ドォンっ!とものすごい音がした。  そしてコックピットのあらゆるアラームが鳴り響く。 「I have control 」(操縦を交代する)  すぐに貴堂がコントロールを宣言する。 「You have control」  立花がコールした。
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10082人が本棚に入れています
本棚に追加