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そんなところも雪真にとって好ましく、それだから帰ってくるとつい、紬希に食事に行こうと声をかけてしまうのだ。
嬉しい、美味しいと素直に反応してくれて、食事を綺麗な仕草できちんと食べ、楽しい会話が出来る。
一緒にいて和む存在。
そして大切にしたい人。
食事が終わった頃合いに、紬希は化粧室に行ってくると席を立った。
その間に会計を済ませてしまおうと、雪真が席を立ち入口で会計を終わらせた時だ。
「あれ? 花小路くんか?」
そんな風に声を掛けられたのは。
聞き覚えのある深みのある声は、コックピットでいつも聞いているものだ。
スラリとした立ち姿ときりりとした整った顔立ちに、お日様のような明るく爽やかな笑顔を浮かべているのは貴堂誠一郎だった。
後ろには雪真も知っているJSAの職員の姿が見える。
「君たち先に行っていて」
JSAの職員は雪真と話したそうだったけれど、貴堂がそう言うと職員達は、はーいと返事をして店の奥に入っていく。
「偶然だな。僕はちょうど勤務の帰りで、明日が待機なのでみんな誘って食事に来たんだが、君は?」
「僕は明日休みなんです」
「雪ちゃんお待たせしました」
入り口の植木に隠れていて、貴堂の姿が見えなかったらしい紬希は、雪真の隣に見知らぬ人がいて一瞬驚いた顔をする。
貴堂の方も一瞬驚いたようだが、すぐ気づいて紬希に頭を下げる。
紬希も慌てて頭を下げていた。
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