15.待機終了10分前に電話は鳴るものである

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「現状、機体は安定している。旋回して軽くしてから着陸する」  それがベストなのは立花にも理解できた。  一刻も早く着陸したい気持ちはやまやまだが、安全に着陸できなくては意味がない。 「了解です」 「キャビンの確認をして機内放送する。You have control」(操縦を頼む) 「I have control」(操縦します)  客室内のことについては客室乗務員がいるので、彼女達についても貴堂は信頼していた。  貴堂は客室にコールする。 『はい。真木です』  落ち着いた真木の声に貴堂も安心した。 「右のエンジン火災です。コックピットの警報は消えていますがエンジンとキャビンの状況を教えてください」  真木は窓から右エンジンを覗き込んだ。先ほど一瞬大きく立ち上った炎だが、今は消えていてうっすらと煙だけがたなびいているような状況だ。 『ここからは火は消えているように見えます。煙が出ています。目立った損傷はないように見えます』 「ありがとうございます。キャビン内で煙とか異常があれば、すぐに知らせてください」  ざわついたり、席を立とうとする乗客を抑えたのは真木だ。キャプテンには操縦に集中してもらわなくては困る。  その分、客室を担当しお客様を守るのは自分たちだという自負が真木達客室乗務員にはある。 『はい』 「お客様は?」 『炎が出た時は一瞬騒ぎになりましたが、今は落ち着いています』 「引き続き、お願いします」  貴堂は機内アナウンスに切り替えた。
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