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そう言ったのは自分だけれど、間違いはなかった、と貴堂は思う。
「だって、紬希は僕のパートナーだからな。信頼してくれてありがとう」
「すっごく心配もしました」
「そうだな。ごめんね」
いつまでもこうしていたいけれど、後の対応もある。
「紬希、僕の部屋で待っていてくれる?」
そう言って貴堂は紬希に部屋の鍵を渡した。
「はい」
紬希は笑顔でそれを受け取ったのだった。
周り中が見ていたけれど、紬希は気にならなかった。だって、目の前の貴堂だけしか目に入らなかったから。
先程、機内での挨拶を貴堂がした時はこぞってCAが色めき立ったのが分かった真木だった。
イケメン、将来有望な優秀なパイロットで、しかも独身。
こんな彼女と抱き合うようなシーンを見せられたのではガッカリなのではないだろうか。
しかし、乗務員部に戻る時である。
CA達の浮き立った雰囲気は壊れていなかった。
ガッカリしないの?
「尊くなかった?」
「それ! 私も思った!」
「もう、映画かドラマのワンシーンのようでしたねー」
──はい?
「素敵な貴堂さんと、妖精のように綺麗な彼女……」
「溺愛でしたねー」
「推せる!」
「推しですー!」
──推し……?とは?
「え? あなた達こう……がっかりしたりしないの?」
「がっかり? なんでですか?」
真木の質問にきょとん、とした表情を返される。
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