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「はい。オーダーシャツを作っています。シェフコートももちろんお作り出来ますよ」
実を言えば、先ほどからシェフコートのデザインが素敵だなあと紬希は思っていたのだ。
「じゃあ、例えば7分袖にしたり、全体を黒でボタンとか襟の一部をグレーで、とか……」
「もちろんできます」
「あとで名刺をください」
「持ち合わせていないんですよね。今日そのつもりでは来てないから。ホームページあります。『三嶋シャツ』っていいます」
彼はバッグの中から自分の名刺を出して紬希にくれた。紬希はそれを両手で受け取る。
『レ・クレドール 門脇俊人』と書かれている。
「門脇さん。三嶋紬希です。よろしくお願いします」
「みしまつむぎさんてどう書くんですか?」
紬希はボールペンで名刺に名前を書いて見せた。
「そっちは俺にください。新しい名刺を差し上げますから。三嶋さん、なんでも作れるんですか?」
「お洋服? はい」
「いや、エプロンとかも?」
「エプロンの方が簡単ですね。サイズもないでしょうし。作ったことはないですけど作れると思います」
「では俺が出世していずれ店を持ったら、是非お願いしたいな」
「お待ちしています」
──お客様をゲットしました!
けれどこの会話がきっかけで、テーブルにお皿を置いてください、とかそうやって飾りつけするんですね!と楽しく会話が弾んで紬希は一人で退屈しないで済んだのだった。
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