2.手縫いのシャツ

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「貴堂さん、僕の幼なじみの三嶋紬希(みしまつむぎ)さんです。紬希、こちらは僕の上司の貴堂(きどう)さん」  貴堂はその整った顔を柔らかく紬希に向けた。  紬希は大丈夫だろうかと、雪真が横を見るとふわりと笑みを浮かべた紬希が挨拶をする。 「すみません、失礼しました。三嶋紬希です」 「貴堂誠一郎(きどうせいいちろう)です。幼なじみといまだに仲が良いのは羨ましいな」  そんなことを言われるとは思っていなかったらしく、紬希はふっと顔を上げた。  その紬希に対して、いつもと同じように貴堂はにこりと笑う。  皆が思わず安心してしまうような笑顔だ。 「あ……雪真(ゆきまさ)さんが、優しいからだと思います」 「そうだね、花小路くんは優しい人だ。君がシャツを作った人?」  紬希は雪真がそんな話をしているとは思わなくて、とても戸惑った。  けれど、そこまで雪真が信頼している人なのだろうと思い直す。 「はい……」 「花小路くんが他のシャツは着られない、と言って褒めていたよ」 「そうなんですか⁉︎」  雪真はいつもとびきりの笑顔でありがとうと言ってくれるし、着心地が良くてとても好きだと言ってくれているけれど、こんな風に上司にまで言っているとは、紬希は思わなかった。  思いがけなく第三者に褒められることがこんなに嬉しいことだと、紬希は思わなかったのだ。
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