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「貴堂さん、僕の幼なじみの三嶋紬希さんです。紬希、こちらは僕の上司の貴堂さん」
貴堂はその整った顔を柔らかく紬希に向けた。
紬希は大丈夫だろうかと、雪真が横を見るとふわりと笑みを浮かべた紬希が挨拶をする。
「すみません、失礼しました。三嶋紬希です」
「貴堂誠一郎です。幼なじみといまだに仲が良いのは羨ましいな」
そんなことを言われるとは思っていなかったらしく、紬希はふっと顔を上げた。
その紬希に対して、いつもと同じように貴堂はにこりと笑う。
皆が思わず安心してしまうような笑顔だ。
「あ……雪真さんが、優しいからだと思います」
「そうだね、花小路くんは優しい人だ。君がシャツを作った人?」
紬希は雪真がそんな話をしているとは思わなくて、とても戸惑った。
けれど、そこまで雪真が信頼している人なのだろうと思い直す。
「はい……」
「花小路くんが他のシャツは着られない、と言って褒めていたよ」
「そうなんですか⁉︎」
雪真はいつもとびきりの笑顔でありがとうと言ってくれるし、着心地が良くてとても好きだと言ってくれているけれど、こんな風に上司にまで言っているとは、紬希は思わなかった。
思いがけなく第三者に褒められることがこんなに嬉しいことだと、紬希は思わなかったのだ。
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