17.育成教育

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17.育成教育

 食事を終えた二人はベランダのデッキチェアで空を眺めていた。  食事を作り終えた時点で門脇は帰っていって、二人でゆっくり食事を済ませたところだ。  貴堂と門脇の関係がフランクなので聞いたら、二人は高校の同級生なのだと言っていた。  門脇は『お店を出したら本当に制服を作ってくださいね』と紬希に笑顔を残し、貴堂に『早く帰れ』と言われていて、紬希は笑ってしまった。  結局、貴堂はベランダに置くための追加の椅子はまだ注文できていない。  だから、今は一つのチェアに二人で座っているのである。 ──これはこれでいいか……。 と貴堂は思っていた。  座っている紬希を後ろから抱きしめる形で、腕の中に紬希がいてくれてとても近く感じるし、温かい。 「紬希、寒くない?」 「ん……少しだけ」 「ちょっと待ってて」  そう言って、貴堂は部屋からブランケットを持ってきて自分と紬希を一緒に包んでしまう。 「こうしたら温かいだろう」  紬希にしてみたらひたすらドキドキしてしまう。  包み込まれるブランケットの中はもちろん温かいのだけれど、それだけではない貴堂の香りとかそういうのにまで包み込まれてしまうから。 「疲れていませんか?」  腕の中から紬希は貴堂に尋ねた。  だって、きっと今日は大変だったはずだ。  貴堂はきゅっと紬希を抱きしめた。 「そうだね。とても緊張したよ。けど、一人のけが人もなく戻れたことを本当に嬉しく思うし、日々の訓練の成果を発揮できて良かったかな」
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