17.育成教育

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 貴堂にとってはある意味当然のように淡々としているのが、紬希は尊敬してしまうところなのだ。 「紬希、今日は空港まで一人で来たの?」 「はい」 「あんなことがあったのに」  貴堂の言うあんなこと、とは立花紫とのことだろう。 「嫌な思いをさせてしまって、申し訳なかったね」  紬希は首を横に振る。 「謝らないでください。私も自分を責めたんです。貴堂さんは悪くないのに、謝らせてしまったって」 ──紬希……?  声は相変わらず澄んだ鈴を転がしたような声なのに、落ち着いた雰囲気は以前とは違うように貴堂は感じた。 「堂々としている彼女に対して、引け目を感じたんです」 「そんなの、感じなくていいのに」 「そうですね」  そんな風に答える紬希はとても穏やかで、なのにゆるぎない。 「私には私のものがあるって、今まで思わなかったんです。けど、私にもちゃんと誇れるものがあるんだって教えてくれたのは、貴堂さんです」  どんな表情でこんな話をしているのか、どうしても見たくなってしまった貴堂は、紬希の顎をそっととらえて、自分の方に向かせる。 「貴堂さん……?」  茶色い髪、真っ白な肌。  大きな琥珀のような瞳、儚げな風情なのは相変わらずなのに、真っ直ぐ貴堂を見つめる瞳は揺らぐことはない。  こらえきれずに貴堂は紬希の唇に自分の唇を重ねた。
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