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「あの……とっても不謹慎なことを言ってもいいですか?」
紬希の不謹慎。
それは是非聞きたい貴堂だ。
「なにかな?」
「いけないって思うのに、少しだけ嬉しいんです」
「正直に打ち明けよう。僕もなんだ。紬希が僕のことで心を乱してくれているのが、少しだけ嬉しかった」
貴堂には全部分かってしまう。
そして、最近は紬希も貴堂のことを分かることがある。
こんな顔で貴堂が近づく時は、キスをする時なのだ。
紬希はそっと目を閉じる。
柔らかく唇に触れる温かさに紬希はそれだけでとても嬉しくなってしまって、身体の力が抜けそうだった。
しっかり抱きしめられている力強い腕も、広い胸も包み込まれる温かさもとてもとても好きだ。
唇と唇が触れることはとても気持ちいい。緩く吸われるのも求められているようでいい。
ただ、口の中を舐められるのはまだ、慣れないのだけれど。
急に身体を固くしてしまう紬希に、貴堂は苦笑した。
「このキスはまだ慣れない?」
やっぱり慣れないとダメでしょうか……。
──考えていることが手に取るようにわかるな。
とても無垢な瞳でダメ?と聞きたそうな表情は可愛いけれど、理性には自信がある貴堂だけれど、貴堂はいたって健康な成人男子なのである。
これは一つずつ教えていかなければいけないな。
貴堂は機長としても非常に優秀な人材だ。
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