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最後に『確認』し、分からない、やれない点を把握し、教え方にどのような問題があったかを反省し追指導を行う。
できれば褒めて自信を持たせたり、承認をするのだ。
しかし、今デッキチェアで片膝を立てている貴堂のその中にいる紬希は全く嫌そうではないし、時折甘えるように擦り寄ってくるのも嫌いではないことは充分に分かる。
──準備や重要性、意義が不明なまま先に進むのはよくないな、うん。
「紬希……」
「はい」
貴堂は紬希のつるりとした頬を撫でながら、声を掛ける。
「先日からしている深いキスだけどね、なぜしているか分かる?」
紬希は首を傾げる。なぜ……。
「そんな風に考えたことはありませんでした。いつもあの……とても必死になってしまってそんなことを考える余裕は……」
紬希が可愛い。
このままぎゅうっと抱きしめたくなるのを貴堂はこらえる。物事を教えるには忍耐と理性が大事なのだ。
「愛情表現だ。紬希がとても大好きだと伝えたいし、それが次につながる行動でもあるんだよ」
「次?」
「そう。紬希は君を僕にくれると言ったでしょう」
両手で口元を抑えている紬希の顔が真っ赤だ。
「あの……じゃあ、私も大好きって伝えたかったらそういうキスをしてもいいってことですか」
いいに決まっている。
十分に覚えたい意欲はあるようだ。前向きで大変いい生徒である。
「もちろんだよ。してみる?」
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