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「嬉しい」
嬉しい、と言った紬希にふと笑いかけて、貴堂は側にいた雪真に声を掛ける。
「ああ、ごめんね、足止めしてしまった。花小路くんも申し訳ない。お疲れ様、明日はゆっくりして」
「はい。ありがとうございます。貴堂キャプテンも」
ついぽろっと出てしまったその言葉には貴堂が苦笑した。
「キャプテンはいらないから……」
「失礼しました」
「またね。三嶋さん、お会いできてよかった」
貴堂のその笑顔はとても自然で、そこに好奇心のような姿が見えなかったことが紬希を安心させた。
「はい、こちらこそ」
だから紬希もそう言って笑顔を返せたのだ。
貴堂の颯爽とした後ろ姿をそれぞれの思いで、紬希と雪真は見送ったのだった。
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