2.手縫いのシャツ

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「嬉しい」  嬉しい、と言った紬希にふと笑いかけて、貴堂は側にいた雪真に声を掛ける。 「ああ、ごめんね、足止めしてしまった。花小路くんも申し訳ない。お疲れ様、明日はゆっくりして」 「はい。ありがとうございます。貴堂キャプテンも」  ついぽろっと出てしまったその言葉には貴堂が苦笑した。 「キャプテンはいらないから……」 「失礼しました」 「またね。三嶋さん、お会いできてよかった」  貴堂のその笑顔はとても自然で、そこに好奇心のような姿が見えなかったことが紬希を安心させた。 「はい、こちらこそ」  だから紬希もそう言って笑顔を返せたのだ。  貴堂の颯爽とした後ろ姿をそれぞれの思いで、紬希と雪真は見送ったのだった。
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