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大人の余裕だ。
目を細めて微笑まれたりなんかしたら、紬希は本当にどうしたら良いのか分からないけれど、貴堂はそれでいいと言ってくれている気もした。
「お任せ……します」
「大事に抱く」
紬希の耳朶に顔を寄せた貴堂はそう言って囁いた。囁きと一緒に吐息までもが耳に触れ、紬希は身体がぞくんっとする。
思わず声が漏れそうになるのを、きゅっと貴堂の手を強く握って伝えた。
先程から胸はずっと、どきどきしっぱなしで緊張と不安と、でも大丈夫と思う気持ちが入り交じって、それにさらに知らなかった感覚が自分を襲ってもう紬希の思考はぐちゃぐちゃだ。
貴堂の身体がそっと紬希に覆い被さる。
お互いの肌が触れた。
「っあ……」
その感覚にさすがに堪えきれなくなった紬希の口からあえかな声が漏れる。
貴堂の唇が紬希の口元に降りてくる。
優しく唇に触れる感触。それに安心して紬希は緩く口元を開いた。
ふっと笑った気配がして、口の中を掻き回される。
気づいたら紬希はしっかり貴堂の身体に触れていた。
情熱的で、濃厚なキスで、それだけで紬希は頭がぼうっとしそうだ。
肌と肌が触れ合う感覚にも少しずつ慣れてきて、むしろ、包み込まれるようにお互いの温かさが触れ合うことにこんなにも親近感や安心感を感じるものだと思わなかったのだ。
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