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「えっと……ごめん紬希、まだ入口だ」
「え?」
硬いものはさらに奥へと押し開いて入ってくる。
「っ……あ、ぁあっ……」
「大丈夫? 紬希? 怖かったら僕を見て」
ぎゅっと閉じてしまっていた瞳を紬希はゆっくりと開けた。
目の前にあるのは大好きな貴堂の顔だ。少し切なげで心配そうに紬希を覗き込んでいた。
「大丈夫です。誠一郎さん、来て?」
煽られたようにぐっと硬いものがもっと奥まで入ってきた。
思わずシーツをぎゅっと握ってしまった紬希の手を貴堂が外して自分の指を絡める。
貴堂も紬希が今まで見たことのない欲情を湛えた顔をしていた。
硬いものは紬希の狭い隘路を押し開きながら入ってくる。
「んっ……あ」
「紬希……紬希、もう少しだから」
思わず紬希の瞳に涙が浮かんでいた。
「痛いか? 止める?」
紬希は一生懸命に首を横に振る。
「や……めないでっ。違います、痛いんじゃないの」
怖くても、不安でもどうしても今貴堂と繋がりたいこの気持ちを紬希はどうやって説明したらいいのか分からないけれど……たった一つだけ伝えられるとすれば、
「誠一郎さんだけですっ……誠一郎さんだから、あ……あぁっ」
多分貴堂は察してくれたのだと思う。
緩く腰を揺すって奥まで入ってきてくれたから。
汗で濡れた紬希の額に、貴堂はキスをした。
涙が零れそうな瞳にも。
「全部入ったよ。君の中、すごく気持ちいい」
良かった……と紬希は安心する。
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