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ロビーに出て見まわすとコンビニがあったので、紬希は入ってみた。お茶のある奥の冷蔵庫の方に向かう。
(さんぴん茶?ってなにかしら)
紬希には分からないが、冷蔵庫にはたくさん並んでいる。手ごろなものを一つ手にして、紬希はレジに向かった。
コンビニにも物珍しいものがいっぱい売っていて、なんだかわくわくしてしまう。
今日は朝から気分がふわふわしてしまって、まったく落ち着かない。今こうして沖縄にいるのもまるで夢の中にいるかのような出来事なのだ。
きっと1年前の紬希ならこんなことは考えられなかった。
緊張と浮足立ったような気分で喉が渇いてしまっていて、ロビーでお茶を飲みながら貴堂が出てくるのを待っていたら、先ほどの男性にまた、声を掛けられたのだ。
「あれ? 彼氏はまだなんですか?」
「はい。もうそろそろ……」
紬希が到着口の方を見ると自動ドアが開いて、ちょうど貴堂が出てくるところだった。
「誠一郎さん!」
「紬希、ごめんね、待ったかな?」
半袖の制服姿の貴堂が笑顔で紬希に近寄ってきた。
──誠一郎さん!カッコイイ!
紬希はうっとりしてしまう。
そして声をかけてきた男性はいつの間にか姿を消していた。
「あら?」
「ん?」
「なんだか知らない方に声を掛けられて……」
うん、それはナンパってやつだよね、という心の声を貴堂は笑顔で押し隠す。
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