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それでも、初めて乗る飛行機が自分が大好きな人が操縦する飛行機だったというのは紬希にも貴堂にも幸せなことだった。
今日はお互いの家から出かけたので、紬希も本当にこの飛行機で大丈夫なんだろうかと機内に入っても不安だったのだ。
紬希のためにと取ってもらった席は二人掛けの席で少し広い席だった。
紬希が席に座るとしばらくしてCAが小さなカードを持って来たのである。
「三嶋様?」
「はい」
「当機のキャプテンからです」
貴堂よりも少し年上だろうかと思うそのCAは、紬希が見とれるような笑顔を見せて軽くウインクした。
──し、知っているのですね!?
紬希はあわてて両手でそのカードを受け取る。
「ありがとうございます」
本当に貴堂は隠すことをしない人なのだ。
『紬希の初フライトがいい思い出になることを』
手書きのそのカードを見て紬希は微笑んで、それをそっと手帳に挟んだのだった。
こんな風にしてくれることこそがいい思い出になるのに。
南国独特の木が生えている高速道路を紬希は物珍しく見ていた。椰子の木が並ぶ高速道路。開放的な景色。
──本当に南の国なのね。
隣で運転してくれている貴堂も気持ちよさそうだ。
「……誠一郎さん」
「なにかな?」
「カードありがとうございました」
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