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「ああ、受け取った? 良かった。席にいることを確認したかったけど、出発前にキャビンを覗くこともできなかったから。フライトは快適だったかな?」
「はい! 海がすごく綺麗に見えました」
機内で上空にいる時に聞いた貴堂の機内アナウンスに紬希がうっとりしてしまったのは、ちょっと恥ずかしくて言えないから内緒である。
「沖縄の海は世界でも指折りで綺麗なんだ。紬希と一緒に見られて嬉しい」
「私も嬉しいです」
貴堂はふふっと笑う。
「で、行きたいところは決めた?」
乗務の間にも貴堂は折を見て現地を観光することもある。
けれど、紬希は初めてなのだ。どこでも行きたいところに連れて行ってやりたい。
「水族館に行きたいです」
「美ら海水族館か。いいね」
「はい。あの、水族館は誠一郎さんと初めてデートした場所なので……こちらでも是非行ってみたくて。あと、月並みかもしれませんが白い砂浜と青い海が見たいです」
「どうしよう」
「え? どうしました!?」
「僕の彼女が可愛すぎて今すぐキスとかしたい。なのに僕は高速道路を運転中だ」
どうしようなんて言うから紬希は動揺してしまったのに、そんなことを貴堂が言うから。
「安全運転でお願いします」
紬希がそう言うと、あははっと貴堂から笑い声が聞こえた。
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