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「じゃあ、安全運転で。お客様、当機はあと30分程で到着の予定です。現地の天気は晴れ、気温28度。たいへん快適な天気であると予想されます。どうぞ、良いご旅行を」
「機内アナウンスですね」
「そう。する時としない時があるけどね。今日は特別だったから」
紬希の初めてのフライトは貴堂にとっては特別だ。
車は高速道路を降りてまだまだ走ってゆく。
すると道路が海際へ通じていて、コバルトブルーの海が紬希の視界いっぱいに飛び込んできたのだ。
その海を割るように橋が架かっていた。
「え? あの橋を渡るんですか?」
「そうだよ」
「すごいわ!」
青い空と真っ直ぐに伸びる道路には二人が乗っている車しか走っていなくてまるで二人だけの世界を走っているかのような錯覚を紬希は起こしそうだ。
そうして車は長い橋を渡る。
それはまるで海の上を走るようだった。
飛行機とはまた異なる景色に、貴堂も紬希もはしゃいでしまう。
「誠一郎さんっ! すっごく、すっごく綺麗です! 海ってこんなに色んな色になるものなんですねぇ。ホリゾンブルー、セレストブルー、ターコイズブルー……グラデーションがとても美しいです。それにこの橋! 海の上を走ってます」
「写真では見たことあるけど、僕も来るのは初めてだ。絶景だな」
島と島とをつなぐ長い橋を渡ったところで貴堂は車を停めた。
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